道 中 双 六 -歌詞-
筆の鞘焚いて待つ夜の蚊遣りより 香のすがりは簪(かんざし)の
算木も捨てて 車座に めぐりはじめる双六は
五十三次手の内に 投げ出す賽の目くばしに
壁にまじまじ大津絵の 振り出す遣り手先払ひ
座敷踊りの中入に 仲居が運ぶ重箱は 姥が餅かと口々に
坂はてるてる鈴鹿の茶屋に 花を一もと忘れてきたが
後でや 後で咲くやら それ開くやら
よいやな よいの土山雨と見て 曇るさし日を迎ひ駕(かご)
人目の関に門立ちは 赤前垂の夕でりに おぢゃれおぢゃれの手をひいて
おっと泊まれの床とれば ねむる禿の浪枕
七里も乗らぬ曳船(ひきぶね)に 綱手悲しむ憂きおもひ
一間に籠もる琴の音は岡崎 岡崎女郎かはし女郎
一夜妻から吾妻路に 夜も赤坂のきぬぎぬに
かざす扇の裏道を 見附越すほど恐ろしさ
音に聞こえし大井川 岸の柳の寝乱れて 此処は島田の逗留かいな
さればいな つもる情けの雪の日は 富士に雲助ぶらぶらと
格子の外のころび寝に 夢は三島箱根山
上り下りの恋の坂 飛脚の文の神奈川や
ご存知よりの土産には 江戸紫のへ
三下がり端歌。別称「五十三次」。
勢州某作曲。津山検校改調。
寛政六(1794)年刊『大成糸の節』初出。
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道中双六は、
絵双六の一種で、東海道五十三宿の絵を一枚の絵に書き、
振り出しを日本橋、上がりを京都としたものらしいですが・・・、
この曲では、上方で創られた唄らしく、
京都を振り出しに、江戸を上がりにしています。
浄土双六にならって、
貞亨(1684~88)頃に作られたもので、
宝永・正徳(1704~16)から盛行したといわれています。
概要は、
上方のお茶屋(おそらく伊勢のお茶屋)で遊ぶ客が、
道中双六を広げさせて遊び戯れている様子が描かれています。