今日は、家元宅で餅花(もちばな)の準備をいたしました。
お正月のお祝いとして舞台に飾るための“餅花”です。
大きな柳の枝に、色とりどりのもち花と共にたくさんのおもちゃを吊るします。
私たちは、毎年その下準備・・・おもちゃや短冊一つ一つに 柳の枝に吊るすための赤い絹糸をつけるわけです。
お名前を頂いた(名取となった)年の暮れから、毎年欠かさずつけてきました。
かれこれ・・・うんっ?・・・30年近くになります。
ただ、先代と先々代の宗家がお亡くなりになった年は、喪に服するからと・・・餅花付けのお手伝いはありませんでしたが・・・。
おもちゃと呼んでいるのは、紙で作られた飾り物のことで・・・大判・小判・福を呼ぶ恵比寿さんや大黒さん・宝船・そして鯛・鶴や亀などのお正月らしいめでたいものばかりです。
餅花の準備をしながら、もうすぐ来るお正月を実感し、来る年の幸せを願います。また、不思議なことにおめでたいものに触れていることでこちらのほうも嬉しい気分になり、福をおすそ分けしてもらっているのかも知れません。
先代の家元様が「縁起のものだから・・・」と、よく言われていたことを思い出します。
もちばなは、繭玉・舞玉・もだま・・・などとも呼ばれ、各地で残っている小正月の行事のようです。
主に雪の深い地方で残っているものが多いようですが、水木科の木や川柳の枝に紅白のお餅やお団子を丸めてつけて、お花に見立てて、たくさんのそれらをつけることによって新しい年の豊作や幸福を願ったようです。
本来は、一つ一つのお餅に 神様から新しい命(魂、玉)をいただく様にとの思いを籠めて作られていたのでしょう。
『もち』には、ち(霊・血・風・いのちのち・・)がも(喪)している―籠められている―ものの意味があるとも言われています。
舞玉という言葉もある・・・などと聞きますと、
華やかなもちばなを見て、新しい年もたくさんの舞の花が咲きますように・・・と、願わずにはおられません。
私の住んでいる奈良の近く、京都相楽郡にも餅花祭というお祭りが中世以来残っているようです。
また、以前テレビで、お団子のほかにみかんも一緒に枝に刺して供えるという地方もあるいうのを聞きました。
各地で少しづつ形を変えながら、受け継がれているようですが・・・
当流(山村流)では、いつごろから飾られるようになったのかは、私は知りません。
歌川国芳の絵にお屠蘇に酔った3人の女性と繭玉飾りの様子が描かれております。
屠蘇機嫌三人生酔
歌川国芳(一勇斎)画 国立国会図書館所蔵
毎年、山村流宗家宅で飾られている餅花のお飾りに近いように思われます。
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私ども、若水会のお稽古場でも もちばなのお飾りをして、
新しい年の幸せと芸の向上を願っております。
ちなみに・・・今年は、明日の予定です。