一月は、行く。
二月は、逃げる。
三月は、去る。
厳しい寒さで始まった今年も、はや立春も過ぎ、
春が待ち遠しい頃となりました。
あと一週間もすると・・・、奈良では春を呼ぶ -お水取り- の行事が始まります。
人間とは勝手なもので、
2月も中ごろになりますと暖かい春を希い待ちます。
日本には、穏やかな四季の移ろいがあり、
その恵まれた風土のおかげで、
繊細でかつ穏やかで感性豊かな日本独特の文化が生まれました。
私の携わっている地歌舞の感性もその風土の中で、熟成されて出来上がったものだと思います。
当たり前だと思っていた日本の風土、気候が、
実は世界でも稀な恵まれた環境であるというのに気がついたのは、
舞の文化、歴史を自分なりに調べ始めてからでした。
同じアジアの文化圏でありながらも、
それぞれの国に独特な文化があり、ひとつとして同じ文化はありません。
日本を創ってきた人たちのほとんどは、
特に奈良時代の文化は中国大陸や朝鮮半島を渡ってきた人たちです。
もともとは同じ民族でありながら、
ものの考え方や、感じ方がずいぶんと異なるのはなぜだろう・・・?と思うとき、
つくづく、その国の持つ風土があたえる影響が大きいなあと感じます。
奈良時代から、平安時代、そして、室町へ・・・。
日本人としての独自の美意識の感性や文化は、
長い年月を経て、ようやく室町時代に入って出来上がり花開いたと言われています。
緑豊かな島国の穏やかな日本の風土の中で生まれた、穏やかな日本人には、
賛否両論、もちろん長所と短所がありますが、
繊細に、移ろう四季を肌で感じながら、
自然を愛で、自然とともに共存するという美しい文化が育まれてきました。
それは、まさに、
春・夏・秋・冬の穏やかな移ろいやゆらぎ・・・。
四季の間(あいだ)潜む 微妙な間合いを感じる感性が、
日本の文化に大きく影響していると思います。
冬から春を待つ、この季節。
二月・如月・・・。
日本では、立春を迎える月ですが、
実際には、雪の多い厳しい寒さが続きます。
しかし、雪の元(した)で 春を待つ若芽が芽吹き、
我々とともに、草木たちも春を待ちます。
自然を愛で、自然に心かたむけ、自然の微妙な変化を楽しみ、喜び、そして、尊びともに遊ぶ。
日本人独特の繊細で、やさしく、美しい、言葉や歌や画が生まれ、受け継がれてきました。
日常の雑事に追われ、バタバタと日々を過ごしていると、
ついつい見逃しやすい、季節のうつろいを感じるやさしいこころ―。
伝統の舞に従事する者として、忘れてはならない大切な感性だとあらためて心しました。
春を呼ぶお水取りが奈良では、もうすぐ始まります。
お水取りが終わると、本格的な春の到来となります。