地歌 越後獅子考 -その3-

この曲、越後獅子は、

先の考でも書いたように、

越後の国(現在の新潟地方)の蒲原郡中心の神社で行われた里神楽の獅子舞が、

京や大坂まで出て来て、

門付け芸人として町角で踊っていた越後獅子(角兵衛獅子)を題材としています。

曲の内容としては、

同地方の地名や数々の名物を掛詞で上手く合わせて、

情緒豊かに唄い綴られたひなびた風情のある作品です。

同名の作品が長唄にもありますが、

派手で写実的な長唄のものとは随分趣きが異なります。

角兵衛獅子の素朴な風物の味わいが、

地歌舞の技巧によって、

微妙に、しっとりと

そして、古風に表現されている点が特色であります。

作品としても

珍しく小道具を多く遣い、

また、起承転結の四つの変化がはっきりとしております。

まず、一文字笠を手に舞い始めたあと、

越後地方の風情の描写から 鞨鼓のくだりへとすすみ、

最後に手獅子をもってめでたく舞い納めるという

四段の構成から成っています。

地歌舞では、座敷舞として、

角兵衛獅子の心をお腹に入れながら、品良く舞わねばならないところが

難しくもあり見所ともなっています。

山村流では、

一人立ちの振りのほかに

二人立ち、また、群舞での振りが付けられております。

私といたしましては、

かつて、四世宗家も五世宗家も共に良く舞われていましたが、

ご一緒に舞台に立たれた二人立ちの印象が強く、

山村流にとっても大切な曲として、

心して舞わせていただく曲でございます。

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