神楽初考‐その1‐

『神楽初』は、
天岩戸の故事に因んだ・・・いわゆる『神楽の起源』を詠った地歌です。

―  神楽初(かぐらぞめ)  ―

 

千早ふる神代の初め  素盞嗚(スサノヲ)の 荒き心を憎ませて
天照神(アマテルカミ)の御怒り  岩戸に隠れましませば
常闇の夜(世)となりにけり
万(よろず)の神の嘆かせ(き)つつ 岩戸の前に集まりて 神楽を奏し奉る
これぞ神楽の初めなる 合手事
時に天照大神宮(てんしょうだいじんぐう)  少し打ち笑み給ひつつ
岩戸を開きましませば 人の面しろじろと見ゆる心の嬉しさは
面白きとは申すなり 

古林検校作曲
作詞者不詳

 
『岩戸隠れ』の伝説のことは多くの方がすでにご存知だとは思いますが・・・、
簡単にその内容をご紹介いたします。 
素盞嗚尊(スサノオ)の乱暴に怒った天照大神(アマテラスオオミカミ)が、天の岩戸に隠れたため、世界は闇となってしまいました。
それを嘆いた八百万の神々が天安河原に集まり相談をしました。
思金神(オモイカネ)の案により色々な儀式を執り行うことになります。
まず、常世の長鳴鳥(鶏)を集めて鳴かせ、祭器を作り、呪物(八尺瓊勾玉と八咫鏡と布帛)を天の香具山の神木にかけさせました。
そして、天児屋命(アメノコヤネ)と布刀玉命(フトダマ)を呼び、雄鹿の肩の骨を抜き取り、ははかの木を取って占い(太占)をさせました。
賢木(さかき)を根ごと掘り起こし、枝にをかけ、フトダマが御幣として奉げ持ち,アメノコヤネが祝詞(のりと)を唱えました。
そこへ登場するのが、芸能の女神とされる天宇受賣命(アメノウズメ)です。
アメノウズメが岩戸の前に桶を伏せて踏み鳴らし、神憑りをして、胸をさらけ出し、裳の紐を垂らしておどりました。
すると、高天原が鳴り轟くように八百万の神が一斉に笑ったので、
いぶかしく思った天照大神は岩戸を少し開けて外の様子をうかがいました。
アメノウズメが「貴方様より貴い神が表れたので、それを喜んでいるのです」と言うと、
アメノコヤネとフトダマが天照大神の前に鏡を差し出し、
すると・・・、
鏡に写る自分の姿がその貴い神だと思った天照大神が、その姿をもっと良く見ようと岩戸をさらに開けたとき、
間髪入れず、
隠れていた天手力男神(タヂカラオ)がその手を取って大神を岩戸の外へ引きずり出し、
天地は再び明るさを取り戻した・・・、というおはなしです。

以上のように、『古事記』は伝えています。
このときの儀式を神楽の始まりとしているのが、この曲・地歌の『神楽初』です。
— 山村流では、四世山村若の振り付けとされています。 —

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