『地歌 浪花十二月』 によせて・・・

今年もいよいよ師走に入り、慌しくなってまいりました。

舞華会の最後を締めくくるのは、やはり これっ!

大坂の年中行事を擬音語を織り交ぜながらおもしろ楽しく詠った、『浪花十二月』です。

写真は、今年の宗家一門会『舞扇会』にて勤めさせていただいた舞台写真です。衣裳は、半素、男役の着流しです。
一枚目の写真は、お正月十日夷の宝恵篭の様子、二枚目は三月ひな祭りの立ち雛を表したものです。

浪花十二月は、一人立もありますが、二人立のほうが掛け合いができて何をしているかが良くわかると思います。二人立ちも男女の場合もありますが、今回は男同士です。男と言っても途中で女役になったりもします。

とにかく、理屈抜きに楽しんでいただけますので、『ゆき』、『葵上』・・・と、重たい演目が続いたあとは、今年一年を振り返りながら『浪花十二月』で、和んでいただきたいと思います。

吉凶の吉凶の毎年の恵比寿さん ここで御座りますそう 欲に子宝はぜ袋の 中に色めく廓駕籠 ほえかご

 

雲居に近き雛祭り さいつおさえつ小盃

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地歌 浪花十二月

【解説】

作詞・作曲者不明のこの作品は、おどけものと呼ばれる地歌の一つで座興的に作られた作物(さくもの)、すなわち滑稽曲であります。擬音語や囃し言葉が多く取り入れられた調子の良い、非常に楽しい作品です。
また〝十二月もの〟とも呼ばれ、これは一月から十二月までの年中行事を詠みこんでいく、いわば年ほめの祝言もので、もともと寿歌であったとされています。一月から十二月の称辞を述べて、新しい神霊の来臨を請い予祝したものです。
まず、正月のめでたい行事に始まり、十日戎、色めく廓(くるわ)駕篭(かご)、初午の凧揚げ、四天王寺の彼岸会と舞楽、雛祭り、汐干狩り、野崎参り、端午の節句、天神祭り等など…文字通り、舞で綴る浪花の風物詩物と言えましょう。

【歌詞】

万代も 尽くせぬ御代や明けの春 まず元日の寿や ものもうどうれと初礼者 祝う若菜や七草の  すずなすずしろ神かけて 祈る誓いも若恵比寿 宝納まる御蔵前 吉凶の吉凶の毎年の恵比寿さん ここで御座りますそう 欲に子宝はぜ袋の 中に色めく廓駕籠 ほえかご  わけてしりめもうわの空 のぼる如月初午の 太鼓の富士か朝霞 ばんばに並ぶ奴いか糸のもつれは唐傘の ひいた時つ 引かれつ 彼岸会や ああ涅槃の  ああ床のああしめやかに ああなんまいだぶなんまいだ 名にこそ高き浪花寺 伶人の舞や 笙の音も雲居に近き雛祭り さいつおさえつ小盃 酔うたまぎれや裳裾引かれし潮干の海よ  蛤ならで片思い ちょっと入れ文しましたことは内緒内緒 誰に知らせし卯月の空に 野崎参りの舟と岡 ぞめき詣りははしたなく 巻くや真菰の足に巻き 幟の鍾馗金時の  力も見ゆる菖蒲太刀 雨のあがりに難波の皐月 やいとかこつけ どろつくどんどん しんきの茶屋で 蛍を舞おうよ 提灯の天神祭はささ山崎の 涼みの中を押し分けて  京都烏丸本家びわ葉湯 ばかしにわかのそのあとは もう御祓いかせわしなや 七夕さんの契りはひと夜 夜ばい星さえ逃げて行く 空に一筋天の川 渡りおおせて八朔や  指をかぞえて松が枝のうらみも晴れて明月の 澄んだ心ではなしどり よろこぶ声も菊月の 後の祭りの宮かぐら すんでいのこの炬燵にも 評判聞いた顔見世の  揃え衣裳の華やかさ 民も賑わう松ヶ枝の 咲くやこの花冬籠り 十返りの花ならん 餅付く音やすす払い 貢納めや絹くばり 言葉もあまるせきぞろに とり集めたる数々の  豆の林で大晦日の 末幾千代と祝い納めん

第10回記念 座敷舞『舞華会・Maikae』

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